オーケストラ 演奏家たちの「給料」はどれくらいなの? 楽器によって差はあるの?【齋藤真知亜】
知られざるオーケストラの世界
NHK交響楽団で第一ヴァイオリン奏者を務めた齋藤真知亜氏の著書『クラシック音楽を10倍楽しむ 魔境のオーケストラ入門』(KKベストセラーズ)。オーケストラの、実にユニークな内幕を余すところなく伝える異色の一冊である。クラシック音楽ファンなら必読の書として好評だ。齋藤氏は2020年にN響を退団しているが、本書ではオーケストラのギャラ事情についても言及している。さて、その秘密の内容とは?
■ヴァイオリンと打楽器のギャラは同じ!
演奏家にとってオーケストラは就職先のひとつだというと、多くの人が「で、お給料はどうなの?」と思うことでしょう。クラシックという高尚な音楽をやっている芸術家集団は、さぞかしいい給料をもらっているだろうと思う人もいることでしょう。
しかし、これもまた一般企業とそれほど違いがあるわけではありません。
N響や読売日本交響楽団(読響)は完全な月給制で、一般企業と同じように年2回のボーナスもあります。オケマンが月給やボーナスをもらっているというと、少し身近な存在に思えてくるのではないでしょうか。
僕は、安心して演奏活動に取り組めるのは月給制のおかげだと思っています。たとえばソリストには高額な報酬を得ている人もいますが、休むと報酬は一切得られません。その点、僕たちには有給があるので、休んでも給料をもらえます。体が資本の演奏家にとって、必要なときに休みが取れるのは何よりありがたいことです。
ただし、楽器の細かいメンテナンス代は個人持ちですし、うまく弾けずにいつもより余計に練習したからといって、残業代がつくわけでもありません。それに、他の業界を知らないのでなんともいえませんが、少なくとも外資系金融マンのようなリッチな暮らしができるわけではないことは確かです。
給料といえばもうひとつ、楽器によって給料に差はあるのかということが気になる人も多いようです。ヴァイオリンのようにほとんど弾きっぱなしの楽器もあれば、ここぞというときだけ音を出す打楽器のような楽器もあります。そうした〝出番の多さ〞とか〝音数の違い〞が給料に反映されるのか、ということです。
これは僕も何度か質問されたことがあるのですが、はっきりいって、楽器による給料の差はありません。
オーケストラの奏者には、楽器のパートごとに「首席」「次席」といった肩書のリーダーとその補佐役がいます。ヴァイオリンの場合だと、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンそれぞれに首席奏者がいて、特に第1の首席奏者はオーケストラ全体をまとめる「コンサートマスター(コンマス。女性の場合はコンサートミストレス=コンミス)という役割を担っています。
また、弦楽器に限り、「次席奏者」は「フォアシュピーラー」といって、コンマスおよび首席奏者を補佐する役割を担います。N響では、こうした肩書きに対する職務手当はつきますが、それ以外はすべて年齢や在籍年数に応じた給料になっています。
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KEYWORDS:
齋藤真知亜&齋藤律子のデュオ〝ニコイチヴァイオリン〟
デビューアルバムが絶賛発売中
「主よ、人の望みの喜びよ ニコイチヴァイオリン」
Jesus bleibet meine Freude nicoichiviolin
純正律の響きを重視して音作りを行うデュオ“ニコイチヴァイオリン”のデビュー・アルバム。弦楽器ならではの純正調による音の共和の美しさは勿論のこと、オリジナルが独奏の2つのシャコンヌは福旋律を交え、奥行きを増した響きの移ろいが興味深い。